動画を保存・共有する際、どのフォーマットを選ぶかで互換性・品質・ファイルサイズが大きく変わります。この記事ではFFmpegユーザーがよく扱うMP4・WebM・MOV・MKVの4フォーマットを徹底比較します。実際の変換コマンドの基本は動画フォーマット変換の基本にまとめてあるので、選び方を決めたらそちらを参照してください。
動作確認: FFmpeg 8.1 / Windows — 本記事のコマンド 7 件を検証スクリプトで実行し、全て成功しました(2026-09-06)
フォーマット早見表
| MP4 | WebM | MOV | MKV | |
|---|---|---|---|---|
| 拡張子 | .mp4 |
.webm |
.mov |
.mkv |
| 標準化 | ISO/IEC | Google/W3C | Apple独自 | Matroska |
| ブラウザ再生 | ◎ | ◎ | △ | △ |
| スマホ互換性 | ◎ | ○ | ○(Apple) | △ |
| ストリーミング | ◎ | ◎ | △ | △ |
| 対応コーデック | H.264, H.265, AV1 | VP8, VP9, AV1 | H.264, ProRes, HEVC | 何でも |
| ファイルサイズ | 中 | 中〜小 | 中〜大 | 中 |
| 編集向き | ○ | △ | ◎(Mac) | ◎ |
MP4(.mp4)
最も広く使われる汎用フォーマット。 ISO/IEC 14496-14で標準化されており、ほぼすべてのデバイス・プラットフォームで再生できます。
主な用途:
- YouTube・SNSへのアップロード
- スマートフォンへの転送・保存
- Web配信
推奨コーデック組み合わせ:
# 最高互換性:H.264 + AAC
ffmpeg -i input.mov -c:v libx264 -crf 23 -preset fast -c:a aac -b:a 128k -movflags +faststart output.mp4
# 高効率:H.265 + AAC(同等品質で小さくできる場合がある)
ffmpeg -i input.mov -c:v libx265 -crf 28 -c:a aac -b:a 128k output.mp4
-movflags +faststart を付けると、Web配信時にダウンロード完了前から再生が始まります(重要)。
WebM(.webm)
Web向けオープンフォーマット。 GoogleがHTML5動画向けに策定し、VP8/VP9/AV1コーデックを内包します。特許フリーでブラウザ対応が良好です。
主な用途:
- ウェブサイトへの埋め込み動画
- Discordアニメーション(GIFの代替)
- WebアプリのUI動画
FFmpegでの変換:
# VP9 WebM(高品質・高圧縮)
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libvpx-vp9 -b:v 0 -crf 33 -c:a libopus -b:a 96k output.webm
# AV1 WebM(最高効率・エンコードは遅い)
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libaom-av1 -crf 30 -b:v 0 -c:a libopus output.webm
MOV(.mov)
Apple QuickTime形式。 macOSやiOSネイティブのフォーマットで、ProResなど高品質コーデックをサポートします。Windowsでは追加コーデックが必要なことがあります。iPhoneで撮った動画をWindowsやSNSで扱いたい場合は、iPhone MOV を MP4 に変換する手順が役立ちます。
主な用途:
- Mac・iPhoneでの録画・編集
- Final Cut Pro・DaVinci Resolveとの連携
- 映像制作ワークフロー(中間フォーマット)
FFmpegでの変換:
# MOV → MP4(最も一般的な変換)
ffmpeg -i input.mov -c:v libx264 -crf 23 -c:a aac output.mp4
# MOV → MOV(コーデックのみ変換)
ffmpeg -i input.mov -c:v libx264 -c:a aac output.mov
MKV(.mkv)
最も柔軟なコンテナ形式(Matroska)。 ほぼすべてのコーデック・字幕・チャプター・複数音声トラックを1ファイルに格納できます。スマホ等での再生には追加アプリが必要なことがあります。
主な用途:
- 長期保存・アーカイブ
- 複数言語字幕の管理
- 動画編集プロジェクトの中間保存
FFmpegでの変換:
# MP4 → MKV(コーデック変換なし・高速)
ffmpeg -i input.mp4 -c copy output.mkv
# MKV → MP4(互換性向上)
ffmpeg -i input.mkv -c:v libx264 -c:a aac output.mp4
用途別推奨フォーマット
| 用途 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| YouTube投稿 | MP4 (H.264) | 最速処理、高互換性 |
| Web埋め込み動画 | WebM (VP9) + MP4フォールバック | ファイルサイズ小 |
| iPhone撮影データの保存 | MOV → MP4変換 | 汎用デバイスで再生可能 |
| 字幕付き長期保存 | MKV | 複数トラック対応 |
| SNS(Twitter/Instagram) | MP4 (H.264) | プラットフォーム要件 |
| Discord GIF代替 | WebM | ファイルサイズ制限に対応 |
実測: 処理時間とサイズ
計測したのは次のコマンドです。
ffmpeg -i input.mp4 -c:v libvpx-vp9 -b:v 0 -crf 33 -c:a libopus -b:a 96k output.webm
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| 処理時間 | 729.16 秒(実時間の 0.16 倍速) |
| 出力サイズ | 65.97 MB |
| 同素材を H.264 で再エンコードした場合(86.26 MB)との比 | -23.5% |
計測環境: Intel Core i9-14900KF(32スレッド)/ FFmpeg 8.1(gyan.dev full build)/ 素材は Big Buck Bunny(© Blender Foundation, CC BY 3.0)1920x1080・30fps・120秒・351.4MB / 2026-09-05 測定。計測は逐次実行で、生データはデータセットで公開しています。
なぜこの数字になるのか
2分の動画に 729.16 秒。 実時間の 0.16 倍速、つまり素材を再生するよりずっと遅いペースでしか進みません。同じ機材・同じ素材を libx264 で再エンコードすると 27.97 秒、フィルタで重い部類の boxblur を挟んでも 59.37 秒、インタレース解除は 14.0 秒、720p への縮小は 18.43 秒です。ここに挙げた再エンコードはどれも1分未満に収まっており、VP9 だけが桁の違う位置にいます。CPU が 32 スレッドあっても libvpx-vp9 は libx264 ほどスレッドを使い切れないため、コア数を増やしても素直には縮みません。
サイズの差は -23.5%。 よく言われる「WebM は 3割小さい」ほどではありませんでした。しかも比較対象の H.264 側は -an で音声を捨てた 86.26 MB、WebM 側は Opus 96k の音声を含んだ 65.97 MB です。旧版でここに書いていた「80〜120MB程度」は実機で測ったものではなく、今回の実測がその見積もりを置き換えます。
「フォーマット変換」には2種類ある。 コーデックまで変えると 729.16 秒かかりますが、コンテナだけを差し替えて -c copy でストリームをそのまま流す操作は、同じ計測バッチで 0.41〜1.03 秒でした(ストリームマッピング 0.41 秒、moov atom の先頭移動 0.49 秒)。MP4 を MKV に入れ替えたいだけなら再エンコードは不要で、待ち時間は事実上ゼロです。逆に言えば、VP9 への変換は「配信前に一度だけ回すバッチ処理」であって、締切前に軽く挟める作業ではありません。
配布の基準を MP4(H.264 + AAC)に置き、Web 配信用に WebM を追加する構成が現実的なのは、この時間差があるからです。1回のエンコードコストを、何度も配信されるファイルで回収できる場合にだけ VP9 は割に合います。
ブラウザで今すぐ変換
→ 動画フォーマット変換ツール(ブラウザ完結) — MP4/WebM/MOV/MKV間の変換をインストール不要で実行できます。
→ 動画圧縮ツール — 変換後のファイルサイズを最小化したい場合に使用します。
よくある質問
YouTube アップロードに最適な形式は?
MP4 + H.264 + AAC が最も無難です。YouTube 側で再エンコードされるためアップロード速度が最速になり、互換性問題も起きません。
自分のサイトでは WebM と MP4 どっち?
両方が理想です。<video> タグで WebM (VP9 / AV1) を先に書き、MP4 (H.264) をフォールバックに。WebM はファイルが 30% 小さく、MP4 は古い Safari やメールクライアント対応に必要です。
MP4 と MOV は何が違うの?
MOV は QuickTime 系のコンテナで、MP4 はそれを基に標準化された配信用途に強いコンテナです。構造は近いですが、入れられるメタデータや編集向けコーデックの扱いが異なります。Web 配信では MP4 が無難です。
MKV を友人に送るのは大丈夫?
VLC / Plex / Jellyfin を使う相手なら問題ありません。iPhone の写真アプリ、メール添付、SNS には不向きなので、その場合は ffmpeg -c copy in.mkv out.mp4 で MP4 に再多重化してください。
AVI はもう使わない方がいい?
基本的にはい。レガシーな DV / HDV カムコーダーのワークフロー以外では、現代のコーデック(H.264 / HEVC / AV1)と相性が悪くおすすめしません。