SNS に何気なく投稿した動画から自宅住所がバレた、フリマアプリの撮影サンプルから撮影者の生活圏が特定された ── こうした事故は 2026 年現在も起きています。原因の多くは動画ファイルに自動で埋め込まれる GPS 位置情報や撮影日時のメタデータです。
本記事では、
- iPhone / Android の動画に何が埋め込まれているか
- 確認する方法(exiftool / ffprobe / ブラウザツール)
- 削除する方法(ブラウザ完結 / CLI コマンド)
- 削除後の検証
を順に解説します。
SNS 投稿前に 1 クリックで全メタデータを削除したい場合は 動画メタデータ削除ツール をお使いください。ブラウザ完結・無劣化です。
なぜ動画にメタデータが残るのか
iPhone・Android のカメラアプリは、デフォルトで動画ファイルに次のような情報を自動で書き込みます:
| 項目 | 内容 | 漏洩リスク |
|---|---|---|
| GPS 座標(緯度・経度) | 撮影時の位置(精度数メートル) | 自宅・職場の特定 |
| 撮影日時(タイムゾーン付き) | いつ撮ったか | 生活パターン推測 |
| カメラ機種(make / model) | iPhone 15 Pro / Pixel 8 等 | 機材バレ・買取査定逆引き |
| 撮影者名(author) | 設定によっては本名 | 個人特定 |
| 編集ソフト名(encoder) | DaVinci Resolve / iMovie 等 | 業務情報の漏洩 |
| カバーアート・サムネ | ベストショット | 別画像からの逆検索 |
これらは MOV / MP4 の コンテナメタデータとして保存され、ファイルを送るだけで一緒に渡ります。SNS によっては自動で削除しますが、保証はありません(後述の検証セクション参照)。
1. exiftool で確認する(最も詳細)
ExifTool は写真・動画メタデータ確認のデファクト標準ツールです。
# インストール(macOS)
brew install exiftool
# インストール(Ubuntu / Debian)
sudo apt install libimage-exiftool-perl
# Windows
# 公式サイトから exe をダウンロード
確認コマンド:
exiftool input.mov
GPS 関連だけ抽出:
exiftool -gps:all -G1 input.mov
出力例(iPhone で東京駅周辺で撮影した動画):
[QuickTime] GPS Coordinates : 35 deg 40' 52.20" N, 139 deg 46' 1.20" E
[QuickTime] GPS Position : 35.681166 139.767000
[QuickTime] GPS Altitude : 8 m Above Sea Level
[QuickTime] GPS Date/Time : 2026:05:15 14:30:22Z
緯度 35.681166 / 経度 139.767000 を Google Maps に貼り付ければ、撮影地点が地図上に正確にプロットされます。これがそのまま SNS に上がっていれば、第三者でも自宅・職場を特定できてしまいます。
2. ffprobe で確認する(FFmpeg 標準)
FFmpeg をすでに使っているなら 追加インストール不要で ffprobe が使えます。
ffprobe -v quiet -print_format json -show_format -show_streams input.mov
JSON 出力から tags セクションを抽出すると、QuickTime メタデータが見えます:
{
"format": {
"tags": {
"creation_time": "2026-05-15T14:30:22.000000Z",
"make": "Apple",
"model": "iPhone 15 Pro",
"com.apple.quicktime.location.ISO6709": "+35.6812+139.7670+008.000/",
"com.apple.quicktime.make": "Apple",
"com.apple.quicktime.model": "iPhone 15 Pro",
"com.apple.quicktime.software": "17.5"
}
}
}
com.apple.quicktime.location.ISO6709 は ISO 6709 形式(+緯度+経度+高度)で位置を表しています。
3. ブラウザツールで確認する(最も手軽)
動画診断ツール は動画をドロップするだけで主要メタデータをローカル解析します。専門コマンドを覚える必要はありません。
ただし HTML5 <video> 要素から取得できる情報は限定的(再生時間・解像度・推定ビットレート程度)で、GPS 詳細までは出ません。完全な確認には exiftool / ffprobe が必要です。
メタデータを削除する
方法 A: ブラウザツール(推奨)
動画メタデータ削除ツール は -map_metadata -1 を使った無劣化削除をワンクリックで実行します:
- 動画をドロップ
- 「全削除」または「プライバシー情報のみ削除」を選択
- 「全メタデータを削除する」をクリック
- ダウンロード
映像・音声は再エンコードせずストリームコピーするため、画質劣化はゼロ。500MB の動画でも数秒で完了します。
方法 B: FFmpeg CLI(全削除・推奨)
すべてのメタデータとチャプター情報を一括削除:
ffmpeg -i input.mov \
-map 0 -map_metadata -1 -map_chapters -1 \
-c copy -movflags +faststart output.mp4
-map_metadata -1: コンテナと各ストリームの全タグを削除-map_chapters -1: チャプター情報を削除-c copy: 再エンコードなし(無劣化)-movflags +faststart: moov atom を先頭配置(Web再生向き)
方法 C: FFmpeg CLI(GPS のみ削除)
機種情報や撮影日時は残し、GPS だけピンポイントで消したい場合:
ffmpeg -i input.mov \
-metadata location= \
-metadata location-eng= \
-metadata com.apple.quicktime.location.ISO6709= \
-c copy output.mp4
該当タグだけ空文字で上書きします。
方法 D: exiftool で削除
# 全メタデータ削除(インプレース)
exiftool -all= input.mov
# GPS だけ削除
exiftool -gps:all= input.mov
ただし MOV / MP4 動画では exiftool の書き換え範囲が一部に限られることがあり、FFmpeg の方が確実です。写真用途には exiftool、動画用途には FFmpeg を推奨します。
削除後の検証
削除しただけで安心せず、必ず再確認してください:
exiftool -gps:all output.mp4
# (出力が空 = GPS 削除成功)
ffprobe -v quiet -print_format json -show_format output.mp4 | grep -i "location\|creation_time\|make\|model"
# (該当行が出なければ削除成功)
ブラウザツールの場合も、出力ファイルを別のツール(exiftool 等)でクロスチェックすると安心です。
SNS 投稿時の追加注意
SNS 各社のメタデータ取り扱いは年々変わっており、完全には信頼できません:
| SNS | 動画メタデータの扱い(2026 年現在) |
|---|---|
| X (Twitter) | アップロード時にほぼ全削除 |
| GPS・撮影日時を保持するケースが報告されている | |
| TikTok | アップロード時に再エンコードで剥がれる |
| Discord | 元ファイルがそのまま保持される(チャンネル経由) |
| LINE | 圧縮されるが、メタデータは部分的に残る |
最も確実なのは アップロード前にローカルで削除する ことです。SNS の挙動変更に左右されません。
よくある質問
Q. iPhone のカメラ設定で「位置情報を保存しない」にすれば足りますか?
A. 新規撮影には有効ですが、過去に撮った動画は変わりません。すでに撮影済みのファイルは本記事の方法で削除してください。
設定変更: 「設定」 → 「プライバシーとセキュリティ」 → 「位置情報サービス」 → 「カメラ」 → 「次回確認」または「なし」
Q. メタデータを削除すると動画の向きが変わってしまった
A. iPhone の縦動画は「回転情報をメタデータとして」持つため、全削除すると回転メタも消えて横向きで再生されることがあります。次のいずれかで回避できます:
- 「プライバシー情報のみ削除」モードを使う(GPS 等は消すが回転は残す)
- 削除前に 動画回転ツール で向きを「焼き込む」(再エンコード)
- 削除後に再度回転を焼き込む
Q. SNS が自動でメタデータを削除するなら、自分で消す必要はないのでは?
A. 削除「するケースが多い」というだけで、保証はありません。Instagram は GPS を保持する事例が継続的に報告されており、また将来のポリシー変更にも影響されます。確実性が必要なら事前削除一択です。
Q. 削除すると元動画のサイズが小さくなりますか?
A. ほぼ変わりません。メタデータは動画ファイル全体の 0.1% 未満で、削除しても数百 KB 程度の差です。容量削減が目的なら 動画圧縮ツール を使ってください。
Q. 削除した動画から、削除前のメタデータを復元できますか?
A. できません。-c copy で削除した動画には元のタグ情報は残らず、復元手段はありません。重要な撮影日時等は別途記録しておいてください。
Q. プロの納品では何を消すべきですか?
A. クライアントへの納品では特に次を削除推奨:
encoder/software— 使用編集ソフトのバージョン情報comment/description— 内部メモcreation_time— タイムライン推測の手がかりauthor/artist— スタッフ名
「プライバシー情報のみ削除」モードで対応できます。
関連リソース
- ツール: 動画メタデータ削除ツール — 全削除・部分削除に対応
- ツール: 動画診断ツール — 削除前にメタデータ概要を確認
- ツール: 動画回転ツール — 削除前に向きを焼き込む
- 記事: iPhone の動画が PC で再生できない原因と直し方 — HEVC・回転・互換性問題のトラブルシューティング
- 記事: iPhone の MOV を MP4 に変換する — フォーマット変換の基本